国産サフォーク羊毛を初めて触った時からその手触りとあたたかさに魅了され、今では国産サフォーク羊毛専門のクラフターになった製作者ですが、日本のサフォーク羊を知ってもらいたく少し書いてみます。

サフォークという品種の羊はもともと英国で作られた品種になります。
英国では伝統的にツイードやフェアアイルニットなどの丈夫であたたかい毛製品が作られ、使われてきました。
今でこそツイードもニットも洗練された雰囲気ですが、元々はイギリスの農家が自宅で飼育する羊の毛を使って自家で制作した野良着、仕事着のようなものです。
冬の厳しい寒さの間、家族が寒い思いをしなくて済むように・・・そういう思いで何世代にもわたり作られてきたものになります。
そういう文化の中でたくさんの品種の羊が英国で生まれてきました。
サフォーク羊もそのような中で生まれた羊なので毛の繊維が太く頑丈で、強い弾力がたくさんの空気を含み断熱性の高い羊毛を持ちます。

日本はといえば、もともと羊がいなかったので長らく羊毛を使う文化がなく西洋文化が入りスーツや官服、軍服といった毛製品が一般の生活に定着しましたが、戦争を経てそれまで輸入に頼り切っていた羊毛を自国で生産する必要性があるということで、大正時代から日本国内でも本格的に羊の飼育が始められました。
初めは羊毛を主な利用に供するために毛用品種のメリノが導入されましたが、その後に毛肉兼用のコリデール種が導入されました。
終戦後に羊毛の輸入が解禁され国内で羊毛を生産する必要がなくなった後に肉用のサフォーク種が導入され現在に至ります。

肉用として日本に導入され飼育されているサフォークですが、もちろん毛も使えます。
現代ではメリノのような繊維が細くてチクチクしない羊毛が好まれているので繊維が太いサフォークは肉用という扱いなのですが柔らかいだけが羊毛の良さではありません。
サフォーク羊毛は丈夫なので擦れても生地が痩せにくくて毛玉が出来にくい、たくさん空気を含むので隙間が少なくて断熱性が高い。
かつての英国のように大事な家族が寒い思いをしなくていいようにと作られた丈夫であたたかいものを作るのにうってつけの羊毛です。

日本のサフォーク羊毛は長年をかけて日本の環境に馴染み、英国サフォーク羊毛よりも少し柔らかくてほんのり上品な艶と手触りの滑らかさがあります。
丈夫さはありつつ、日本人の薄い皮膚にも馴染みやすい羊毛に変化しているのでツイードやフェアアイルに慣れていない方でも使いやすいと思います。

SUFFOLK SQUARE では、北海道のせたな町にある小野めん羊牧場のサフォーク羊毛を一括で出荷していただき国内でツイード糸に加工、製作者の自宅にある木製の織り機でひとつひとつ手作りしています。

また、サフォーク羊は観光牧場や動物園でたくさん飼育されているので会いにいきやすい羊です。
顔と手足が黒くて、体は白い可愛い羊なのでぜひ見に行ってみてください。

牧場から送っていただいたサフォークの親子の写真です。
サフォークの仔羊は産まれた時は全身黒くて、大きくなるにつれて体が白くなっていくそうです。