国産羊毛ツイードの SUFFOLK は、北海道せたな町の小野めん羊牧場のサフォーク羊毛で制作したツイード服地です。
サフォークは英国で生まれた品種になり、白い体に黒い顔と四肢が特徴の羊です。
弾力がありよく膨らむ羊毛なので、スポンジのように空気をよく含んで軽くあたたかくツイード原料に適した羊毛になります。
本作は国産のサフォーク羊毛の中でも、硬さと柔らかさのバランスが取れており程よい艶もある小野めん羊牧場のサフォーク羊毛を一括で出荷いただき制作しました。

日本でウールの服といえば、柔らかなニットや細い糸で端正に織られた制服生地などが主になってきますがこれらは繊維が細くて柔らかいメリノ種の羊毛を使用したものがほとんどです。
メリノ種の羊毛はその繊維からとても細い糸が作れるので薄地のスマートな服地が作れます。
対してツイードは太めの甘撚り糸で織ったふっくらと厚い服地です。
太い糸で織るツイードは織り糸一本一本が摩擦の影響を受けやすく、毛玉が出来にくい丈夫な羊毛で作る必要があり、更に厚地なので弾力が強くつぶれにくい性質が要求されます。
国産のサフォーク羊毛はまさにツイードに向く性質を兼ね備えており、繊維が太く丈夫で毛玉が出来にくいので服地が痩せず長年の着用に耐えられるものになっています。

国産羊毛ツイードの SUFFOLK は、ツイードに最適な北海道産のサフォーク羊毛を国内企業の素晴らしい技術で紡毛糸に加工して手織り・手仕上げを施しました。
特に紡績については、国内でも数少ないミュール精紡機で羊毛の良さを最大限引き出しており特別な糸に仕上がっています。
ミュール精紡機は現在の日本で多く使用されている紡績機械より歴史が古く、生産効率などの理由から時代と共に少なくなってしまった機械ですが原料に強い力や摩擦を与えることなく自然で美しい形状の糸に仕上げられるので、糸の表情をそのまま活かす国産羊毛ツイードにマッチした紡績糸を作ることができました。

紡績された糸は、自宅で手織りしてツイードに加工しています。
手織りは手間がかかりますが機械で織るよりも優しい力で作業できるので硬くなりすぎず、しなやかに仕上がります。
また、時間はかかりますが1着分だけなど小さな生産にとても向いているので多彩な柄のツイードを制作するのにちょうどよく一年にごく少量しか生産できない国産羊毛ツイード糸に合った作り方です。
織りあげた後の仕上げも手作業で、微妙な加減を見ながら行います。
羊毛の選定から加工・仕上げまで一人で担当して、こだわりのツイードに仕上げています。

仕上げ(縮絨)の後には、仕立てた後に服地が伸び縮みして形が崩れないようにセット加工を施します。
個人宅では強い圧力や強力な蒸気を当てる現代のやり方は出来ないので、手間と時間はかかりますが昔ながらの ロンドンシュランク法 という手法でセット加工を施しています。
古い方法ではありますが結果は良好で、工程中で徐々に目が詰まり美しい艶が布全体に出てツイードが完成します。

ツイードの色は日本人に合うようネイビーを基調に国内の染色会社に原料を染めてもらいブレンドして作っています。
数色に染めた羊毛をブレンドして杢のある糸に仕上げることで、ツイードに仕上げた時に複雑な奥行きが現れ着る人を惹き立てる服になります。
模様はシンプルな伝統模様をメインに年齢や性別を問わず、日常使いしやすいよう作ってありますので特別な日でも、なんでもない日でも気兼ねなくたくさん使っていただけますと嬉しいです。


国産羊毛ツイード SUFFOLK を使用した作品紹介
鹿児島県鹿児島市の有限会社宮田光二商店様にて、男性用のコートを仕立てていただきました。
生地の持ち込みはなかなか受けていただけるお店はないのですが、こちらは珍しく持ち込みできるテーラーさんになっております。
参考作品服地使用量:シングル幅4.2メートル


SUFFOLK は主にジャケット生地を想定しておりますが、コートにも使えるよう少し重めの目付にしています。
朝晩少し冷えるそんな時期にサッと羽織ってスマートにお出かけ出来る服地になります。
テーラーさんで美しい服に仕立てていただくのも素敵ですが、洋裁などでも自由な発想で素敵なお洋服に仕立ててほしいです。商用利用も可能です。


お手入れ
仕立てたものによりますが、ジャケットやコートはドライクリーニングを推奨します。
※仕立てた服を一般的なクリーニング店に出す際は品質表示ラベルが必要になりますのでご注意ください。例外だとは思いますが品質表示ラベルなしのハンドメイドの作品を受け付けているクリーニング店もあるようなので詳しくは検索してみてください。

ブランケットなど小物類はおしゃれ着洗剤を使用し30℃ほどのぬるま湯で浸け置き洗いしてください。
お湯の中で揉んでしまうとシワがついて取れなくなったり、服地が縮んでしまうことがあるので優しくお願いします。
洗った後の脱水は洗濯機でOK、干すときは形を整え日陰で平干ししてください。

着用後は柔らかい洋服ブラシで服地についた汚れや埃を優しく落としてください。
座った際についたような軽いシワは一日ハンガーにかけておけばきれいに取れます。
羊毛は汚れが付きにくい繊維なので頻繁な洗濯は必要ありません。
匂いや汚れが気になった時、シーズン終わりに洗濯してください。
お出かけ前に型崩れが気になる場合はハンガーに掛けたままスチームを軽く掛けるぐらいで整います。
(しっかり整えたい場合はあて布の上からアイロンのスチームをかけるか、ツイードが少し湿った状態で低温~中温のアイロンをあて布の上からかけると綺麗になります)
高温でのアイロンや塩素などの薬品類は素材が焦げたり溶けてしまうので使用しないでください。